2012年12月23日 日曜日

年越し間じか

先週はかなりばたばたしており、6日の出勤で4日は出張。
まあ、なんとか無事に過ごせてよかったと思います。

それはさておき、短編Vol12が仮完成です。
なんとか24日に間に合いました!

今度はクリスマスに向けての話。
登場人物名は同じですが、前回の話とは全く関係ありません。
境遇は違っても、性格は近いかもしれません。

お時間があるときにでも読んでいただけたら幸いです。

Asanagi's SS Vol.12 「かなみとDEC」

かなみとタカシは、街外れにあるビルの一室で家庭向けロボットのカスタマイズを行う会社を営んでいた。
カスタマイズとは、現在ごく一般的に普及している、掃除ロボットやセキュリティロボット、
コミュニケーションロボットなどを持ち主好みに"調整"することである。
ありふれた個体に個性を持たせることができることから、ここ最近、一部のユーザーに浸透し始めている技術だ。
タカシは、それらに目をつけ会社を起こしたのだった。
従業員は2名。ようは、かなみとタカシである。
元はタカシが、半ば趣味のような形で行っていた仕事であったが、
かなみを雇うと同時に部屋を借りて、今では少しまともな会社の態をしている。


「デック、おはよ。今日の天気は?」
出社したかなみは、看板犬のデックに声をかけた。
看板犬といっても、本物の犬ではない。
デックは、2年前にタカシが、かなみの勉強用にと買ってきた機体である。
ゴールデンレトリバー型を模しており、購入時より少しずつカスタマイズされている。
今では、技術進歩が早いこの業界においても、動力性能を除いては、最新モデルに匹敵する性能を持っている。
ちなみに、デックという名前は、この機体のシリアルナンバーの中にDECの文字があったことから、タカシが勝手につけたものである。
安直だなぁ、とかなみは思ったが、今となっては違和感も無い。
「今日のXX市の天気は曇りのち雪。昼過ぎから降り始め、明日の朝までには10cmほど積もる見込みです」
「そっか。もう冬だもんね」
かなみが、エアコンにスイッチを入れ、ブラインドを開けた。
ここから見るいつもの風景も、明日には真っ白に染まっていることだろう。
2週間後はクリスマスである。
「クリスマス・・・か」
今年はクリスマスどうしようかなぁ――かなみはそんな事を考える。
たまには昔みたいに、タカシと一緒に過ごしたいなぁ、と思う。
タカシとは幼馴染であったこともあり、昔は、一緒に勉強をしたり、お互いの家に泊まったりしたものである。
クリスマスも一緒に過ごしたりした。
しかしそれは中学生の頃までのことで、その後は、進路が違った事もあり、疎遠になった。
このまま、お盆正月ぐらいしか会えなくなるのかな?とかなみは思っていたが、
そんなときにタカシから、今の仕事に誘われたのだった。
仕事の内容に興味が沸いたし、今まで学んできたことが生かせそうだった。
そして、何よりタカシと仕事が出来ることがとても嬉しかった。
「・・・」
ただ、最近はタカシとの距離にもどかしさを感じてもいた。
昔に感じていたあの距離にどうしても近づけない。
やはり、時間が空いたらダメなのかな?もう少し仲良くなりたいのに、とかなみは思う。
「今年は大丈夫かな?」
去年は、飛び込みのオーダーがちょうどいい時期に入ってしまったため、クリスマスのクの字も味わえなかった。
今年は今のところ、問題はなさそうなのが幸いである。
「?」
かなみが後ろを振り返ると、デックがお座りをして愛嬌のある顔をかしげていた。
頭をなでなですると、尻尾がモップのように左右にふれる。
「デック、ちょっと聞いてほしいんだけど」
こんなこと願いするのも悪い気がするけど、と思いつつも、かなみはデックに一つのお願いをした。



タカシが会社に顔を出したのは、定刻の少し前だった。
タカシの目に、観葉植物へ水を与えているかなみの姿が目に入った。
「おはよう、かなみ」
「おはよ」
デックもテクテクとタカシのところに近づいてきた。
「おはよう、デック。今日は冷えてるな」
かなみがエアコンをつけてくれていた事もあり、室内はかなり暖かく感じる。
「おはようございます。現在の外気温は-1度です」
「どおりで寒いわけだ」
今の時間で、氷点下になることはそれほど多くない。
タカシは手袋とコートを脱いでハンガーに掛けると、パソコンの電源を入れて、メールの確認をはじめた。
「明日までに雪が積もるんだって」
「もう冬か。実家のほうじゃあ、大分積もってるんだろうな」
「この前聞いたら、50cmぐらいだって」
「かまくらが余裕で作れるぞ」
「懐かしいね。また作りたいな」
かなみが少しだけ遠い目をする。
昔は、よくかなみや近所の連中とかまくらを作ったり、雪だるまを作って遊んだものである。
「店先が広い会社ならなぁ、作れるんだが・・・」
タカシたちの会社はビルタイプの建物である。
店先は道路である。歩道も1mほどしかないので、置けるスペースが無い。
「置く場所があったとして、かまくら作って、デックに遊ばせたら、お客さん来るかな?」
「試してみようか」
「・・・今の外気温では稼働時間と動作速度が低下してしまいますが」
デックがいつもと変わらない冷静な声で答える。
屋内仕様かつ、寒冷地仕様でもないデックには、雪遊びは厳しいかもしれない。
「アクチュエータ変えればなんとかなるか?」
「バッテリーをどうにかしてください」
「ワイヤードにしてみる?」
「じゃまですよ」



昼休みになると、かなみにしては珍しく、外で食べてくる、と言って外に出て行ってしまった。
部屋には、デックとタカシが残される。
コンビニで買ってきた弁当を電子レンジに入れたタカシは、
応接兼用のソファーに座わり、弁当についてきた広告に目を通した。
裏面は、クリスマスケーキの予約についての案内だ。
「しばらくケーキすら買ってないなぁ」
ここ数年は仕事が入ったり、新作が発表されたりして、気が付けば年を越してしていた。
とはいえ、ケーキを買うにも一人では虚しいだけである。
かなみと一緒に食べるなら買おうとも思うが、中学時代は、かなみと一緒にいることが恥ずかしく、辛く当たってしまった事もあるし、
進学してからは、ほとんどかなみといる事は無かった。
かなみに彼氏がいたかどうかも分からなかったりする。
今更、幼なじみ面してもいい関係ではない。
「まあ、これだけ時間が空けば、当たり前か」
チン!という電子レンジの音に目を上げると、デックが隣の席からじっとタカシの様子を見つめていた。
「どうした?」
「12月24日のタカシさんのご予定は?」
「?今のところ、スケジュール表に書いてあるとおりだぞ?」
基本的なスケジュールは、壁に掛けてあるスケジュール表のとおりである。
今年は休日ということもあり、特に予定は入っていない。
デックにも同じような情報が入っているのに、とタカシは思う。
「いえ、仕事の話ではなく、オフの話です」
「特には無いが」
「巷では、12月24日はクリスマスイブ。『恋人とあるいは気になる異性と共に過ごす日』と言われていますが」
タカシはじっと、デックの顔を見つめてみるが、くりくりとした目はいつもと変わらない。
いくらクリスマスケーキの記事を見ていたとはいえ、デックがこのように唐突に話題を降ってくるのも珍しかった。
どこかで変な知識を仕入れてきたのかもしれない。
「ご予定が特にないとなれば、かなみさんをお誘いしては如何でしょうか」
「なんでかなみ?」
「お二人とも互いを理解していないように思います。たまにはどこかへ出かけ、親睦を深めるのがよいと思います」
饒舌なデックにタカシは目が点になる。
「そうは言うが、せっかくのクリスマスに俺と一緒ってのもどうなの?」
かなみに気になる人がいるというのなら、誘うのは野暮であるし、
一応はであるが、雇い主に無理やり誘われる、というのも避るべき、とタカシは思う。
タカシがそう言うと、デックは犬らしからぬしぐさで目を伏せ、顔を左右に振った。
アクチュエータの動く音がかすかにする。
「タカシさんはもっと、かなみさんを見てあげるべきです。
 これからこの会社を続けていくためにも、重要だと思います」
デックに言われて、タカシは思う。
かなみが仕事を終えて帰る時、連休の前、仕事が二人とも速く終わった時、
そんな時、かなみは何かを言いよどんだ事があった。
どこと無く寂しげな瞳を今更ながら思い出す。
「・・・」
「かなみさんはきっと、タカシさんから声をかけられるのをずっと待っていますよ」



近くの喫茶店でランチを取っていたかなみは、デックから送られてきたメールに思わず真っ赤になった。
「で、でで、デックっ!」
かなみはデックに、「クリスマスイブの予定をタカシに聞いて欲しい」と言っただけであった。
そこまで突っ込んだ事を言ってくれ、とは言っていない。
いくらデックからの言葉とはいえ、あれはかなみの気持ちを代弁しているようなものである。
ど、どうしよう、午後、職場にどんな顔をして戻ったらいいの!?
もう、デック!充電禁止にするからね!
かなみは心の中で目いっぱい叫んだ。



かなみはできるだけ平静な顔を装って、会社のドアを開けた。
タカシは何事も無かったかのように、ソファーでテレビを見ており、
デックはかなみが会社に戻ってくるなり、白々しく耳を後ろ足で掻きはじめた。
「ただいま」
「おかえり。雪降りはじめた?」
「え?あ、うん。ちょっとだけ」
降っていたような気もするが、かなみはそれどころではなく、ほとんど覚えていなかった。
「今日は早めに引き上げるか。帰り道で転んで怪我したら大変だしな」
タカシはそう言うと、テレビを消して、自分のデスクに戻った。
かなみも自分の席に戻り、作業を始める。
タカシとかなみの席は、二人の顔が見えやすいように配置されていたが、
このときばかりは顔を伏せたくて仕方が無かった。
タカシに顔を見られるのが恥ずかしい。
顔が赤くなってないか気になる。
「・・・」
「・・・」
とはいえタカシは普通の表情で作業を続けている。
かなみはなんとなくやるせない気持ちになった。
やっぱり、タカシは私に興味が無いのかな・・・
子どもの頃はずっと一緒だもんね。兄妹みたいなものなのかも、そう思ってしまう。
「かなみ」
「な、なに?」
タカシから掛けられた声に、かなみはびくりとした。
「22日からの3連休だけど、たまにはどこかに出かけて休もうと思うんだ。
 よかったら、一緒に行かないか」
唐突にタカシから掛けられた言葉に、かなみは少しの間、頭の回転が止まってしまった。
タカシは、頬を照れくさそうに掻いていている。
ようやく回りだした頭の中で、ゆっくりと言葉を反芻する。
「え?」
意味を理解するなり、心臓が跳ねる。
脈が速くなり、顔が赤くなっていくのが分かった。
「嫌か?」
タカシが少し不安げな顔をして、聞いた。
「ううん、そんなこと無いよ!」
かなみは、嫌な訳ない、と思う。
違う進路を歩み、離れている間も、ずっとタカシが好きだった。
むしろ、離れていたら余計にタカシの事が好きになっていた。
「そうか」
タカシはそう言うと、ははは、と安堵したように苦笑いをした。
「どこ行くか決めてるの?」
かなみは、目尻に浮かんだ涙をタカシに見えないように拭いて、気持ちを切り替える。
「いや、まだ。温泉には行きたいな」
「昔と同じで、相変わらず適当だね」
「うるさいわい。かなみはどうなんだよ」
「え?私は・・・温泉かな?」
「なんだ、同じじゃないか」
照れ隠しをしているように見えるタカシの横顔を見ながら、
かなみはデックの充電禁止は止めてあげようと思った。


END
2012/12/23

special thnks.
ひげ漁師



--
あとがき
今回も普通の話であります。
要約しますと、子どもの頃は仲が良かったけど、久しぶりに会って、距離感がつかめない二人の話です。

なんで、二人で会社回してるの?とか、
プログラムなんかそんな簡単に変えられねぇ!
とかご意見があるかもしれませんが、
イメージとしては、ロボットのOS≒Androidとお考えください。
手間ではありますが、プログラムを開発できないわけではないのです!(言い訳)

2012年12月3日 土曜日

December

今年もついに12月。
1年間が早くて早くてしょうがありません。

子どものころは、だんだんと近づいてくるクリスマスや正月、そして降り出す雪にわくわくしたものですが、
今では、気が付いたら通り過ぎていて、あっけなさしか残りません。
もうちょっと時間のコントロールを美味くできればよいのですが。


さて、それはともかく、短編が久しぶりに出来上がりました。
約2700文字。原稿用紙7枚程度。
季節に準じて、冬の話です。
内容は、いたって平凡。ツンデレ娘も出てきません。
只単に日常を描いた、ごくフツーの話であります。
あと、今回は、文章の書き方を変えてみました。違和感無く読んでいただけたら成功でしょうか。

お時間があるときにでも読んでいただければ幸いです。

Asanagi's SS Vol.11 「冬の日とプレゼント」

「寒くなってきたな」
タカシが、悴んだ手先を摺りあわせながら言った。
息を吹き込むと、朝日に息が当たり、白く視界を染める。
「そうだね。これからもっと寒くなるよ」
隣を歩いていたかなみが答える。
二人は、学校に向かう途中だった。
街路樹の葉はほとんどが落ちており、冬がすぐそこまで来ていることを感じさせる。
そんな状態なのに、タカシは防寒具の用意を忘れてしまっていた。
今朝は一段と冷え込んでいる事ともあって、タカシの指先はすっかり冷え切っていた。
「放課後にでも手袋買いにいこう。さすがに辛いぞ」
もう一度、指先に息を吹き掛けてから、上着のポケットに手を突っ込む。
かなみのほうは、タカシとは違い、モコモコとした手袋をしている。
見るからに暖かそうだ。
そんな事を思っていると、かなみがタカシの視線に気がついた。
「どうしたの?」
「いや、モコモコしてて暖かそうだな、と」
かなみの手袋は、白をベースとした手編みチックな装いで、ピンク色で桜の模様が施されていた。
冬なのに桜?とタカシは思ったが、そのピンク色の刺繍がかなみにはよく似合っていると思う。
「そうかな?」
「ああ、暖かそうだ」
そんなタカシの様子を見かねたかなみは、小さな使い捨てカイロを差し出した。
「はい。これあげる」
「いいのか?寒くない?」
「いいよ。私は手袋してるし」
「さんきゅ」
タカシはかなみから受け取ったカイロをポケットの中で握った。
じんわりとした暖かさが手に染み渡る。
「手袋なんだけど、タカシはどんなのがいいの?」
「黒?いや、紺色かな。んで、寒くないの」
「そっか。そうだ、週末に一緒に買いに行かない?行きたいところがあるんだよ」
かなみと一緒に出かけるとなると、市街地のほうかな?
それとも、足を伸ばして、遠出になるかな。
タカシはそんな事を考える。
「日曜なら大丈夫だけど、それまで我慢か・・・」
「もう。カイロあげるから」
「わかった。我慢する」



タカシたちのクラスはいつも以上ににぎやかだった。
あるクラスメイトの周囲に、十数名の生徒がわいのわいの、と集まっている。
他の生徒も、なにやらいつもと違う雰囲気だ。
「なんだ?」
「どうしたんだろうね」
教室に入ろうとしていたタカシとかなみは、顔を見合わせる。
男女問わず集まっている様子から、野郎連中が不謹慎なものを持ち込んで騒いでいるようではなさそうだ。
タカシはそう思いながら、自分の席にカバンを置き、輪の中に入ってみた。
かなみもさりげなく後ろについてくる。
「なにかあったのか?」
誰かからの回答を期待めて聞いてみる。
「お、タカシか。前川がラブレターもらったんだとさ」
すぐ近くにいた山田が答えてくれた。
「らぶれたー?ってあのラブレター?」
「あのラブレターだね。今どき珍しいよなぁ」
感慨深げに山田が言う。
タカシも同感である。てっきり、ドラマの中だけのことかと思っていた。
「本物なんだ?」
タカシの肩に手をかけて、輪の中を見ようと背伸びをしていたかなみが山田に聞く。
「そうみたいね。名前も書いてあって、後輩の子らしい。女子が言ってた」
「はー」
タカシは、少し背伸びをして、輪中の人を見てみる。
前川は、それほど長身長という訳でもないし、それほど顔がいいという訳でもない。
どちらかというと、クラスの中ではあまり目立ない。
とはいえ、話し方は穏やかで、いつの間にか人が集まるようなタイプであった。
みんなにちょっかいを出されている彼は、少し照れくさそうにしながらも、嬉しそうに見えた。



昼休み、タカシが窓の外を眺めながら、朝の事を思い出していた。
「(ラブレターか・・・)」
羨ましく思わないことも無い。
タカシは、今まで浮つくような話など無く、当然、ラブレターをもらったことも無い。
固着するところまでいかないが、青春の1ページとして一度は貰ってみたいものである。
「タカシもラブレターが欲しくなった?」
友達とお弁当を食べてきたかなみが、タカシにたずねた。
「まあな」
「ふぅん」
かなみはそう言うと、タカシの顔を覗き込む。
目の前にあるかなみの澄んだ瞳にすべてを悟られそうに感じる。
「なんだ、意外か?」
「ううん。もらったこと無いんだなー、って思って」
「貰ってたら言ってるよ」
かなみとタカシは幼馴染であり、一緒にいることが多く、仲も良かった。
通学も一緒だから、クラスメイトから仲を誤解されるのも幾度と無くある。
お互い本心を隠す必要もあまりなく、隠し事も必要が無ければしない。
そんなこともあり、タカシは仮に自分がラブレターを貰ったとすれば、かなみに報告をするはず、と思っている。
「そっか」
かなみはそう言うと、くすくすと笑った。



手紙は本物だった―とタカシが誰からと無く聞いたのは、数日後の事だった。
相手はタカシは知らない名前だったが、クラスメイトの話では、かなりの美人とのことだった。
「で、俺はそんなイベントもなく、日々が過ぎるわけですよ」
そんな事をぼやきながら、タカシはいつもの通学路を歩く。
悴む指先に息をかけると、あたりが真っ白に染まった。
今日は、土曜日ということもあり、隣にいつもの話相手がいない。
「・・・カイロも今日はなしか」
その事を寂しい、と思っていることに、タカシ自身はまだ気がついていなかった。



昇降口から、自分の教室へと向かう。
無人の教室は、ストーブもついていないため、かなり寒い。
タカシが自分のロッカーを開けると、茶色の紙袋がちょこんと入っていた。
手にとって見ると、かなり軽い。
「なんだこれ?」
―誰か入れ間違えたか?
前後左右を見てみるものの、持ち主らしき名前は見当たらない。
「?」
中を開けてみると、紺色の手袋と手紙が入っていた。
『タカシへ
 いつも寒そうにしているので、作ってみました。
 気に入ってくれたら嬉しいかな?
 明日のお買い物楽しみにしてるね』
差出人の名前が書いていなかったが、タカシには誰からのものなのかすぐ分かった。
字を見れば一目瞭然だし、こんなことをしてくれるのは一人しか思いつかなかったからだ。
「かなみ・・・」
早速手袋を着けてみる。
大きくも小さくも無く、ちょうどいいサイズだ。
手を目の前にかざすと、甲の部分に雪の結晶が象られている。
―かなみが編んでくれたのか?
純粋に嬉しい気持ちがこみ上げる。
気がつけば、タカシは自分の頬が緩んでいるのが分かった。
もう一度、手紙と手袋を見つめてから、手紙を丁寧に胸の内ポケットへとしまい込む。
「・・・」
幼馴染で、気がつけば一緒にいたた、かなみ。
中学校のころは、友達の目が恥ずかしく、少し離れたこともあったけれど、今は、また一緒にいる。
かなみはどう思っているか分からないけれど、
これからも、今までのようにいられたらいいな、とタカシはかなみの笑顔を思い出して、そう思った。



END
2012/12/03

special thnks.
ひげ漁師

--
あとがき
たいした落ちも無くー、であります。
こういった書き方でありますので、途中でかなみの動向も入れても良かったかもしれませんが、
あえてタカシの近辺のみを描きました。
かなみがタカシのことをどう思っているかは、本人のみぞ知る、といったところです。

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(C)あさなぎ